人気ソーシャルVRアプリ『VRChat』を初心者目線で徹底レビュー:必要なもの、初期投資、VR酔い、どんな体験?
『VRChat』とはどのようなVR体験か
VR空間での交流に興味がある方が耳にする機会が増えているのが、『VRChat』です。これは、ゲームというよりも、自由な仮想世界(メタバース)で他のユーザーと交流したり、多様なコンテンツを体験したりできるプラットフォームです。
ユーザーは好きなアバターになりきり、世界中に存在する数万、数十万とも言われるワールドを訪れることができます。ワールドには、カフェのような社交場、美しい景観、謎解きやアスレチックなどのミニゲーム、イベント会場など、さまざまな種類があります。単に他のユーザーと音声チャットで話すだけでなく、ジェスチャーを使ったり、一緒にワールド内の仕掛けを楽しんだりすることが可能です。
『VRChat』は、Valve Index、Oculus Rift(現Meta Rift)、HTC ViveといったPC VR環境だけでなく、Meta Questシリーズのスタンドアロン環境でも楽しむことができます。このアクセスの幅広さも、多くのユーザーを引きつけている理由の一つです。
実際に体験して感じたこと:正直レビュー
私が『VRChat』を初心者として体験してみて、まず強く感じたのはその「自由度の高さ」と「多様性」です。
良い点(メリット)
- 圧倒的なコンテンツ量と多様性: 数多くのワールドがあり、毎日新しいワールドが公開されています。静かに景色を眺めることも、大人数でライブに参加することも、特定のテーマについて語り合うこともできます。自分の興味に合わせて様々な体験ができる点は大きな魅力です。
- アバターを通じた自己表現: 多種多様なアバターが存在し、自分の好きな見た目で仮想空間に存在できます。これにより、現実世界とは異なる自分を表現したり、なりたい自分になったりする楽しさがあります。無料で使えるアバターも多数提供されています。
- 世界中の人との交流: 言語の壁を越えて、あるいは同じ興味を持つ人同士で気軽に交流できます。特に日本語話者向けのワールドも多く存在し、初心者でも話しやすい環境を見つけやすいです。
- 常に進化し続けるプラットフォーム: ユーザー自身がワールドやアバターを作成・アップロードできるため、コンテンツが常に新しく、尽きることがありません。
課題や不満点(デメリット・注意点)
- 初心者には情報が分散しがち: 公式のチュートリアルはありますが、膨大なコンテンツや機能の全てを網羅しているわけではありません。始め方、基本的な操作、マナーなど、必要な情報を自分で探しに行く必要がある場面が多いです。
- ワールドによる品質のばらつき: ユーザーが作成するため、非常に高品質なワールドもあれば、動作が重かったり、作り込みが甘かったりするワールドもあります。入るまで快適さが分からないことがあります。
- 迷惑行為の可能性: 残念ながら、一部には他のユーザーに不快な行為をする人もいます。ボイステロ(大音量の音声)、アバターテロ(非常に重いアバターや不適切なアバター)、迷惑な追跡などが見られることがあります。ただし、適切な設定や機能(ブロック、ミュート、セーフティ設定)を使うことで、多くの問題は回避できます。
- 要求されるPCスペック(PC VRの場合): PC VR版で多くのワールドや大人数イベントを快適に楽しむためには、それなりのグラフィック性能を持つPCが必要です。特に高品質なワールドや多くの人が集まる場所では、PCスペックが低いと動作が重くなり、最悪の場合クラッシュすることもあります。Meta Quest単体版はPC不要ですが、PC VR版に比べてアクセスできるワールドやアバターに制限がある場合があります。
- 初期投資: Meta Quest 2などのスタンドアロンHMDであれば3万円〜5万円程度から始められますが、PC VR環境をゼロから揃えるとなると、高性能なゲーミングPCとPC接続対応HMDが必要になり、15万円、20万円、それ以上の費用がかかる可能性が高いです。
VR酔いについて
『VRChat』では、移動方法が多様です。一般的なスティック移動(スムーズな移動)や、瞬間移動(テレポート)があります。スムーズな移動は酔いやすい方がいる一方で、テレポートは酔いにくいですが、臨場感が損なわれると感じる人もいます。
特に、ジェットコースターのようなワールドや、激しい動きをするワールドに入ると、VR酔いを強く感じやすいです。また、自身のHMDの設定や、PCの処理性能不足によるカクつきも酔いの原因となります。
私の体験では、初めてスムーズ移動を試した際に少し酔いましたが、設定で移動速度を調整したり、テレポートを主体に使うようにしたり、こまめに休憩を挟んだりすることで、ほとんど酔わずに楽しめるようになりました。多くのワールドでは、酔い対策としてテレポート移動がデフォルト設定になっています。
VR初心者(田中健太氏のような方)へのアドバイス
田中さんのように、VRに興味はあるけれど、何から始めればいいか、自分に合うか分からないという方にとって、『VRChat』は非常に多様な体験ができるため、VRの可能性を知る良い入り口となり得ます。
- 始める前に検討すべきこと: まずはPCを持っているか、高性能なゲーミングPCかを確認します。高性能PCがあるならPC VR環境(Quest 2/3やIndexなど)も選択肢に入りますが、PCがない、あるいはスペックに自信がない場合は、Meta Quest 2やQuest 3単体で始めるのが手軽でおすすめです。Quest単体でも多くのワールドや機能を楽しめます。初期投資を抑えたい場合も、Quest単体から入るのが現実的です。
- 必要なもの: HMD本体(Meta Quest 2/3など)、安定したWi-Fi環境が必要です。PC VRの場合は、対応する高性能PCとHMD、そしてそれらを繋ぐケーブルや機器が必要になります。アカウント作成は無料で、SteamまたはMetaアカウントを使用します。
- VR酔い対策:
- 初めてのうちは、移動方法をテレポートに設定できるワールドを選ぶか、テレポート移動を主体に使うのが無難です。
- 設定で「スムーズ移動」を使う場合は、移動速度を最も遅く設定してみます。
- 酔いを感じ始めたら、すぐにHMDを外して休憩を取ります。無理は禁物です。
- 体験前に酔い止め薬を服用することも有効な手段の一つです。
- 空腹や満腹時を避け、体調が良い時に体験するようにします。
- コンテンツの探し方: 最初は「JP Hub」のような日本語話者が多く集まる公式ワールドや、初心者向けと明記されているワールドから訪れてみるのがおすすめです。TwitterなどのSNSで「#VRChat_jp」といったハッシュタグを検索すると、日本のユーザーやイベント情報を見つけやすいです。
まとめ
『VRChat』は、単なるゲームアプリではなく、多様な人々が集まり、様々なコンテンツが生まれる「もう一つの世界」と言えます。その自由度と可能性は非常に魅力的です。
一方で、初心者にとっては情報収集や設定に戸惑うこと、迷惑行為への対策、そしてPCスペックやVR酔いの問題など、いくつかのハードルがあるのも事実です。
しかし、Meta Questシリーズの登場で以前より手軽に始められるようになり、日本語圏のコミュニティも活発なため、これらの課題をクリアしながら楽しむことは十分に可能です。
新しい人との出会いや、これまでにない多様な体験をしてみたい方にとって、『VRChat』は時間と初期投資に見合う価値がある、非常にユニークなVR体験となるでしょう。まずはQuest単体版から試してみるのが、VRの世界への第一歩としておすすめです。