VRでの3Dモデリング・ワールド制作は初心者におすすめ?必要なもの、初期費用、VR酔いの正直レビュー
はじめに:VRで「作る」という新しい体験
VRと聞くと、多くの方がゲームや映画鑑賞、ソーシャルコミュニケーションといった「見る」「遊ぶ」といった体験を想像されるかもしれません。しかし、VRの可能性はそれだけにとどまりません。VR空間の中で、まるで粘土をこねるように直感的に3Dモデルを作成したり、自分だけのオリジナルの仮想空間(ワールド)を作り上げたりする「作る」という体験も、VRならではの魅力の一つです。
今回は、このようなVRでの3Dモデリングやワールド制作が、VR初心者にどのような体験をもたらすのか、始めるために必要なもの、初期費用、そして気になるVR酔いについて、実際に体験した正直なレビューをお届けします。VRで何か「形あるもの」を作ってみたいと考えている方の参考になれば幸いです。
VRでの3Dモデリング・ワールド制作体験レビュー
VRでの3Dモデリングやワールド制作には、いくつかの異なるアプローチやツールが存在します。簡単な例としては、絵を描くように空中に線や立体を配置していくツールや、より本格的な3DモデリングソフトウェアをVRで操作するもの、そしてVR空間そのものを作り上げるプラットフォーム固有のツールなどがあります。
体験の良い点(メリット)
私が体験した中で最も印象的だったのは、その直感的な操作感です。平面の画面上でマウスやキーボードを使って3D空間を操作するのとは異なり、VRでは自分の手で直接オブジェクトを掴んだり、回転させたり、サイズを変えたりできます。まるで現実世界で工作をしているような感覚に近いと言えるでしょう。例えば、空間に線を描くツールでは、本当に空中に絵を描いているような自由な感覚で作業が進められます。
また、空間把握能力を活かせる点も大きなメリットです。作っているものがどのくらいのサイズで、周囲とどのような位置関係にあるのかを、実際にその場に立っているかのように確認できます。これにより、オブジェクトの配置や全体のバランスを把握しやすくなると感じました。特に、VR空間そのものを作るワールド制作においては、実際にその空間に入って歩き回ることで、使い勝手や雰囲気を確認できるのはVRならではの強みです。
体験の課題や不満点(デメリット)
一方で、初心者にとっていくつかの課題も存在します。最も大きな点として、ツールの習得が挙げられます。簡単なツールであればすぐに使い始められますが、より複雑な形状を作ったり、詳細な設定を行ったりするには、それぞれのツールの操作方法やワークフローを学ぶ必要があります。これは従来の3Dモデリングと同様ですが、VR独自の操作に慣れるための時間も必要になります。
また、精密な作業の難しさも感じました。直感的な操作ができる反面、非常に細かい部分を正確に調整するのは、マウス操作に比べて難しい場合があります。例えば、特定の頂点を正確な座標に移動させる、複数のオブジェクトをピクセル単位で整列させるといった作業は、ツールによっては煩雑になることがあります。
さらに、快適にVRで制作活動を行うには、ある程度の性能を持つVRデバイスとPCが必要になる場合が多いです。特に、本格的なモデリングや広大なワールド制作を行う場合は、PC接続型のVR環境が推奨されることがあり、そのためには高性能なグラフィックカードを搭載したPCが必須となります。これは初期投資のハードルとなり得ます。
ペルソナ(田中健太氏)の懸念に対する考察
- デバイス選び: VRでの制作活動を検討する場合、スタンドアロン型(PC不要)かPC接続型(PCVR)かが選択肢となります。簡単な3Dスケッチや、特定のプラットフォーム内でのワールド編集であればスタンドアロン型でも可能な場合がありますが、多くの本格的なツールや、より自由度の高い制作を目指す場合はPCVRが必要となることが多いです。必要なPCスペックはツールの種類や作成するものの複雑さによって大きく変動するため、利用したいツールが必要とする最低スペックを確認することが重要です。
- 初期投資: デバイス本体の費用に加え、PCが必要な場合はその購入費用も考慮に入れる必要があります。高性能なPCは数十万円かかることも珍しくありません。また、利用するツールによっては有料のものやサブスクリプションが必要なものもあります。初期投資に見合うかどうかは、「VRでどのようなものを作りたいか」「どの程度本格的に取り組みたいか」によって判断が分かれるでしょう。まずは無料のツールや、比較的安価なスタンドアロン型のアプリから試してみるのも良い方法です。
- コンテンツ内容: VRでの制作ツールは多様です。絵を描くように直感的に使えるもの(例: Gravity Sketch, Quill)、より詳細なモデリングが可能なもの(例: Medium by Adobe, BlenderのVR機能)、VR空間そのものを作り、イベントなどを配置できるもの(例: VRChatのUnityベースSDK, Clusterのワールド制作ツール)などがあります。自分の興味や目的に合ったツールを選ぶことが重要です。
- VR酔い: 制作中は激しく動き回ることは少ないため、ゲームに比べればVR酔いは起きにくいと感じる方もいるかもしれません。しかし、視点を移動させたり、ズームイン/アウトしたり、メニューを操作したりする際に、人によってはVR酔いを感じることがあります。特に、慣れないうちは短時間で休憩を挟む、快適なフレームレートが出る環境を整える、酔い止め対策を行うなどの注意が必要です。
初心者へのアドバイス
VRでの3Dモデリングやワールド制作は、非常にユニークで創造的な体験です。しかし、いきなり複雑なツールに挑戦するのではなく、まずはシンプルな操作で始められるアプリやツールから試してみることをおすすめします。
もしPCをお持ちでなく、まずは手軽に試したいということであれば、スタンドアロン型のVRデバイスに対応した無料または安価なモデリングアプリから始めてみるのが良いでしょう。PCをお持ちで、将来的に本格的な制作も視野に入れている場合は、PCVR環境の構築を検討する価値があります。ただし、前述の通り、PCのスペックが重要になりますので、利用したいツールが推奨するPCスペックを確認してください。
VR酔いが心配な方は、短時間の作業から始め、休憩をこまめにとるように心がけてください。また、ツールの設定で、スムーズな視点移動ではなく、カクカクとしたステップ状の視点移動(スナップターン)に設定すると、酔いを軽減できる場合があります。快適な環境で集中して取り組むことが、VRでの制作を楽しむ上で重要です。
まとめ
VRでの3Dモデリングやワールド制作は、「見る」「遊ぶ」とは異なるVRの可能性を体感できる、非常に魅力的なクリエイティブ活動です。直感的な操作で空間に直接働きかけられる点は、既存の3D制作手法にはない大きな利点と言えます。
一方で、ツールの習得や精密作業の難しさ、そして特にPCVR環境における初期投資の負担は、初心者にとって無視できない課題となり得ます。また、作業内容によってはVR酔いの可能性も考慮する必要があります。
この体験は、新しい表現方法を探求したい方、モノづくりが好きで3D制作に興味がある方、あるいは将来的にVR空間での活動を本格的に行いたいと考えている方には特におすすめできます。まずは手軽なツールからVRでの「作る」感覚を体験してみて、その可能性を感じてみるのが良いスタートになるでしょう。
VR技術やツールの進化により、今後さらにVRでの制作活動はより手軽に、より高度になっていくことが予想されます。将来的に、VR空間で誰もが自由に創造活動を行うことが当たり前になるかもしれません。